
クリスマスが今年もやってくる〜♪ 12月になりましたね!
クリスマスといえばフライドチキンやローストチキン、それにクリスマスケーキ、いちごのショートケーキですよね!
そう、これがクリスマスの定番です。
しかし最近、日本のクリスマスのシーンに新しいお菓子がたびたび見られるようになりました。
それは、シュトーレンというお菓子です。
ここ数年で都市部の百貨店がシュトーレンを売り出すようになったり、洋菓子店やパン屋も挙って作るようになりました。
こうして、一瞬のトレンドとならずにシュトーレンは日本でもかなり浸透してきたように思えます。
そこで今回は、シュトーレンについてのお話をしてまいります。

まずは、シュトーレンについて詳しくお話しする必要がありますね。
シュトーレンとは菓子パンに分類されるもので、ドイツやオランダでクリスマスに食べられている伝統的なお菓子となっています。
平たく伸ばして焼かれたものの上に粉砂糖を使って真っ白になるまでまぶしてあるので外見は白く、中身はスパイス、ナッツやドライフルーツ、マジパン(アーモンド粉末と砂糖を混ぜ合わせた砂糖菓子)などをふんだんに使っています。
そのため、非常にボリュームがあって高カロリーなお菓子となっています。(笑)
シュトーレンは11月末からクリスマス準備期間に食べ始め、クリスマスに食べ終わるのが伝統的な食べ方です。
なので、一気にガブっとは食べずに少しずつスライスして食べるのがおすすめです。
もともとシュトーレンはどこの国で作られたかというと、ドイツになります。
語源としてはトンネルの形に似ていることから、坑道や地下道という意味がある「Stollen」からその名がつきました。
ちなみにですが、ドイツ語の発音としてはシュトーレンではなく、「シュトレン」が正しいそうです。
発祥の地については諸説あり、ドイツの北東部に位置するザクセン=アンハルト州の説と、東の端に位置するザクセン州の州都であるドレスデンといわれる説があります。
ザクセン=アンハルト州の説では、1329年にナウムブルグ司教へのクリスマスの贈り物が最古の記録として残っているためにこの説が発祥だという声があります。

しかし当時作られたシュトーレンは、水とオーツ麦、てんさいから採れる油だけを使ったものだったので、味も素朴すぎてそこまで美味しいものではなかったそうです。
これには、キリスト教の40日間(四旬節)の断食期間が要因となっており、この期間は肉食ができないということで、牛乳とバターが使えなかったのです。
そこから今のシュトーレンのかたちとなったのが、ドレスデン説です。
ザクセンの貴族で絶対的権力を持っていた選帝侯エルンストは、前述の理由で味気ないシュトーレンが作られることに対して不満がありました。
選帝侯は1430年にローマ教皇にバター・牛乳の搾取禁止令の撤廃をお願いします。
しかし、すぐには許可は降りず1491年にようやくバター食用の許可証が交付されます。

この効果は選帝侯の宮廷内だけでしか使えないものでしたが、バターと牛乳を使ったシュトーレンはドレスデン全体に広まっていきます。
その中で、当時宮廷パン職人を務めていたハインリッヒ・ドラスド氏はドライフルーツなどを加えて改良したものを作りました。
これが今のシュトーレンのかたちとなり、ドレスデン風のシュトーレン、「ドレスナー・シュトレン」として商標登録もされています。
そのため、本場のドレスデンのパン屋では指定されている材料分量がある中で、門外不出のレシピをそれぞれ代々受け継いてでいて、味を競っているのです。
ドイツ発祥は間違いありませんが、ルーツとしてはザクセン=アンハルト州、今のかたちになった始まりがドレスデン、ということですね。
では、シュトーレンはいつ日本で製造されて販売されたのか?
Wikipediaでは福岡のスベンスカベーカリーと書かれていますが、よく調べてみるとチロリアン・千鳥饅頭で有名な千鳥屋という福岡のお菓子メーカーが始まりだそうです。
ちなみにスベンスカベーカリーは、千鳥屋の系列店なのであながち間違ってはいないようですが…。
それでは千鳥屋はいつ製造販売を始めたかというと昭和44年、1969年になります。
ドイツで作られた時からだいぶ時間が経っていますね。
経緯としては、千鳥屋の倅であった光博氏が「焼き菓子に国境はない」ということで、福岡銘菓チロリアンが発売された翌年の1963年にヨーロッパに修行の旅に出ます。

そこで、ドイツ北部の都市ハンブルクにある「ベーレント」という歴史ある菓子店で修行を続けて、さまざまな菓子のレシピを貰います。
そのレシピの中には、ドレスナー・シュトレンの配合もあったのです。
1969年、これを福岡に持ち帰った光博氏がベーレントの伝統を守ってシュトーレンの製造・販売を開始します。
千鳥屋では、このシュトーレンのレシピを知っているのは現在たった一人しかいないようで、光博氏がベーレントから貰ったレシピの原本も金庫の中に保管されているそうです。
前述の通り、日本でシュトーレンが作られて売られたのは1969年に福岡の菓子メーカーの千鳥屋が初というのはわかりました。
ここからは、シュトーレンがどうしてここまで人気になったのかについて話してまいります。
まず、シュトーレンが一般的に知られるようになったのは、福岡の製粉工場である鳥越製粉がドイツパンの普及活動を目的に立ち上げたドイツパン研究会や、2008年株式会社デイジイの倉田氏が立ち上げたドイツパン・菓子勉強会が広報活動の注力を続けてきたことが大きいでしょう。
また、2011年からは一世帯あたりの消費金額でパンが米を抜き、その後もパンの方が消費金額が多い時代が続く、パンブームが始まります。
そこから、2013年の秋に東京の表参道で週末開催される青山ファーマーズマーケットでは青山パン祭りという催しが開かられるようになります。
そこで、シュトーレンの食べ比べがおこなわれたことによって注目が集まり、シュトーレン人気に火がついたとされています。

これには昨今の日本の状況が後押ししてくれたのも大きいでしょう。
まず、InstagramやTwitterなどSNSの影響で誰でも気軽に感想を言えたり、情報のシェアができることがシュトーレン人気を支えている要因のひとつかと思います。
そのSNSで情報をシェアすることや批評をすることで自身のコミュニティレベルも上がるほか、お店側にも宣伝効果が期待できるということで洋菓子店・パン屋も技術を追求して、それぞれ個性のあるシュトーレンを作り出しました。
需要側に対して供給側も応えたことにより、流行り廃りなく人気が続いているのです。

そしてなにより、クリスマスという日本での期間限定イベントを利用したのも大きいです。
もともとシュトーレンはクリスマスに食べるものなので、しきたりを守ろうとする考えを持った日本人にも違和感なく了承されたのはそうですが、日本のクリスマスは宗教的な面よりみんなで楽しむ大きいイベント事として捉えています。
そのため、クリスマスという期間限定の特別感を求める中でシュトーレンはクリスマスケーキに代わるものとして浸透できたのかと思います。
もしシュトーレンが「クリスマスに食べるもの」でなければ、日本では一瞬のブームで終わってしまったかもしれません。
さらに供給側にも大きいメリットがあります。
それは、シュトーレンが「焼き菓子」という点です。
クリスマスケーキは生菓子なので長期の作り置きができず、販売期間も数日間しかないですが、焼き菓子のシュトーレンは日持ちもするギフトとして販売できるので1ヶ月以上の販売期間を設けることができるほか、廃棄となる食品ロス問題を回避できるところも大きいです。
いかがでしたか?
今回はシュトーレンについてお話しさせていただきました。
今の日本では有名ホテルや洋菓子店、パン屋でも作られていますので、伝統的なドレスナー・シュトレンだけでなく、いろいろなシュトーレンが出回っています。
これを機にクリスマスケーキだけではなく、シュトーレンも楽しんでみてはいかがでしょうか?
クリスマスまでにはまだまだ時間もありますのでいろいろ比べてみるも良し、忙しくてそのままクリスマスを迎えてしまった方でも、ケーキより当日買いがまだしやすいかもしれないので、ぜひ食べてみてください!
そして近いうちにクリスマスケーキに代わる、シュトーレンに代わる、また新しいなにかが生まれてくるのでしょうか…!?
その時が来たらまた、記事を書いてみたいですね…!

この記事書いた人 ナナ
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